第14回世界コンピュータ将棋選手権
TACOS自戦記

橋本 剛   平成16年5月16日記

  

2次予選

一回戦 K-Shogi
K-Shogiの本田さん
K-Shogiの本田さん

去年も一回戦で当たったK-Shogiが緊張する一回戦の相手。 本田さんはお仕事がSEでなかなか時間がとれないとのこと。
将棋はTACOSの居飛車急戦。定跡でばばばっと一瞬で進んだが、出てきた局面は TACOSが得意そうな局面。 快調に攻めて行ったが62竜の王手がおそらく疑問手。72金と受けられたら 難しかったかもしれないが相手の手はTACOSの読みと同じ72桂打ち。以下は 一気に寄せ切った。
(後日激指3で検討したところ、7二金はこちらが角を2枚取る変化になり悪くないと分析された。)
1勝0敗。




二回戦 礒部将棋
礒部さん
礒部さん

また今年も礒部将棋と当たった。去年も2回戦であたりTACOSが勝ったが、おかげで 強豪にたくさんあたり、最終順位では礒部が9位でTACOSが10位。 それにしても毎回毎回よく当たる。個人的には一番ライバルという感じがする相手だ。 シリアル対戦の時の表示にバグがあって後手だと表示がまったく更新されない。まぬけだ。 しょうがないからみんなで礒部さんの画面を見せてもらう。
将棋は礒部将棋が居飛車急戦で55歩とついてある形。どうもこの形は苦手かもしれない。 押さえ込まれてかなり悪くなったが終盤敵玉の周りで手のつけ方がうまく一時は逆転 していたかもしれない。相手も思い切りよく61竜から攻めて来て寄せ合い勝ちかと思ったが、 TACOSの71飛車(詰めろらしい)に74桂がしゃれた好手。同飛車でも詰めろではないが、とったあと65馬と 桂をはずされて受けなしにされた。礒部さんに聞いたら74桂の時点でそれを読み切ってはいない だろうとのことだがそれにしてもうまくやられた。今年は裏に行ってがんばろう。
1勝1敗。




三回戦 柿木将棋
柿木さん
柿木さん

今年も柿木将棋と早めに当たった。去年は柿木将棋に勝ったおかげで一目置かれるようになった。 ただ昨日の自動対戦でもやたら負けてて、かなり不安。今年のTACOSは他の上位のソフトとの 勝率はかなり上がったが何故か柿木将棋に対する勝率は逆に去年より下がってしまっており、どうも 柿木将棋が苦手なように仕上がってしまったらしい。
さて、将棋は去年と同じ穴熊の将棋。TACOSは居飛車の銀冠、柿木将棋が四間穴熊。TACOSの69角がいい手で、 金と交換になるが囲いの金が思いっきりそっぽに行って優勢に。しかし51飛車から81の馬を取った手が おかしく、もつれ気味に。相手もコンピュータが間違えそうないやな手順で来たという感じ。 いやな流れだったけど26歩と桂を殺しに来てくれて27に空間ができたのが大きく、最後はすべて こちらに都合がいい展開にたまたまなったという感じで最後は大差で勝利。順調だ。昨年に続いて 柿木将棋に勝てたのはうれしい。
2勝1敗。




四回戦 葵

堤さん
葵の堤さん

相手はここまで全敗だが、奈良さんに一次予選勝ち上がり組みでは葵が強いと聞いていた。 実力はあるのにたまたま運悪く成績が良くない相手と当たるのはいやなものだ。
中盤でこちらだけ龍を作って良くなったものの、その後の指し手はなんだかいまいち。 相手の7三の香が玉頭を狙っててかなり危険なのに、どうもよくわかってないみたいだ。 112手目7六歩と玉頭に取り込まれた辺りでは逆転されたと思った。 132手目再度7六歩と打たれた時にはもうだめかと思ったが、TACOSはここで平然と6八玉! まともに受けるより上に上がった方がいいという判断はどうやら正しかったようで、 TACOSは一目散入玉を目指し相手は指し切り模様に。 最後はバグじゃないかとあせる難しい詰ませ方で勝利。 かなり心臓と胃に悪い試合でした。 ここで負けたらさすがに決勝は危なかったが、よくぞ持ちこたえてくれた。
ちなみに葵はこのあと4連勝していた。
3勝1敗。




五回戦 KFEnd
有岡さん
KFEndの有岡さん

ここからは決勝常連の相手が連発。あまり裏街道にも来ていない模様。 KFEnd は昨年も当たったが、矢倉の中盤でこちらがややよかったものの飯田先生に 佐藤康光ばりの素晴らしい攻めとうならせた華麗な攻めを喰らい負け。 その雪辱やいかに…
今年も矢倉で、早々に角交換。取った角を歩を取りに96角と打ってしまう。確かに歩は取れるんだけど… すぐに角の丸損になりそうで恐れたが、なんとかしのぎきってくれた。最後に角は取られても 相手が手を作りにくく逆にこちらが指しやすい展開に。79手目8六銀同角から2九飛車!と じっと引いた手にはバグかと思ってびびったが、 確かに相手に有効な手はなく結果的にはこの飛車が相手の攻めを封じて良かったようだ。 相手の59銀と銀取りに打ってきた手を 無視して攻める判断もよかったようで、最後は45桂捨てと気持ちいい手も出て快勝。
この勝ちは非常に大きく、決勝が少し視野に入ってきた感じ。
4勝1敗。




六回戦 大槻将棋
大槻さん、朽名さん
大槻さん、朽名さん

大槻さんは昨年の金沢将棋に続き今年はKCCを破る好調ぶり。また嫌な相手に当たるなあという感じ。 最もこの辺では誰に当たるのも嫌だが。
大槻将棋は振り飛車からの角換わり向かい飛車で八筋の突破を狙う形に。すっかり忘れていたが、 実は私も去年将棋世界の付録でこの戦法を見たとき「これだ!」と思い、 来年はこれで行こうと自分なりに研究をしていた。 市販ソフトもこの攻めをもろに喰らう場合が結構あり、確かに対コンピュータには有効な作戦だと思う。
そんな事はすっかり忘れて何の対策もしていないTACOSは案の定もろに喰らう形に。 41手目で飛車を引かれていたら悪かったと思う。飛車交換の形にしてくれたので 勝負形に。相手の47手目3一角から9一飛成はおそらく悪手。駒得になりTACOSが優勢になった。 TACOSの56手目、どうやって受けるんだろうと思っていたら2二玉には少し感心。 この辺り新評価関数がうまく働いたのかも。自陣もがちがちになり、 以下は遊んでる銀を追いかけたのは感心しないが相手の攻めを軽くいなして快勝。
5勝1敗。




七回戦 金沢将棋
金沢さん、小松さん
金沢さん、小松さん

言わずと知れたビッグネームの金沢将棋に今年も当たった。 5勝1敗同士で勝った方が決勝に大きく近づくというので注目されていたようだ。
勝又先生に大盤解説もしていただいた。
金沢将棋得意の角換わりに。 相手の得意を外して振り飛車にしようかとも考えていたが、あえて相居飛車で挑むことにした。 先手金沢将棋は居玉のまま6五銀7五銀と銀が2枚進出してきた。 解説によるとこの銀はやや指しすぎでTACOSが若干模様がいいらしい。 TACOS得意の9三桂(何故かよくやる)を相手がとがめて来て36手目、 勝又さんは「これは指せないかなー」と9八歩を推奨。何とTACOSはその9八歩を見事指した。 これには感激。ギャラリーの方々も「おおー」という感じだった気がした。 その後もTACOSは勝又先生の解説どおりの手を指し、迎えた46手目銀香両取りに対し銀を受けずに9九歩成! この手も勝又先生に激賞してもらった。 TACOSは銀受けちゃうのかなーと内心思っていたのでまた感激。 この辺りは相当うまく読んでいたよう。 私が普段開発に使っているマシンは大会で使ったものより相当遅いので、 ここでは私が思っていた以上にTACOSは強くなっているようだ。
解説によるとこちらが多少いいとはいうものの怖い形にされたところでTACOSは56手目意味不明の9九香成。 これには一同ズッコケた。どうせ成るなら9八だろうに。 しかしその後は相手の攻めを恐れることなく解説どおりに急所を攻めて優勢になっていく。 24でやらせていてもそうだがTACOSは相手の攻めを恐れずがんがん行くのでこういう将棋は得意に仕上がったよう。 飛車を利かせてから3五歩と逃げ道を作って玉を上部に逃がした手も正解のようで、 面白いように勝又先生の解説と指し手が合致する。 78手目の3六歩は解説には出なかった手だが、プロでも気づきにくい好手だったようで、勝又、 飯田両先生にお褒めの言葉をいただいた。 この手が決め手になったようで、以下数手で見事金沢将棋相手に勝利を収める。
決勝がぐっと近くなってきた。
6勝1敗。




八回戦 永世名人
吉村さん
永世名人の吉村さん

6勝1敗でトップに並び、この試合に勝てばいよいよ念願の決勝進出が確定! 永世名人とはTACOSがまだかなり弱くぎりぎりで2次予選に行けた第11回大会で当たって以来の対戦。
相矢倉で相手は悠々と4手角で来ているのにTACOSは何をしていいのかわからずうろうろしてる間に 作戦負けになってしまった。さすがに百戦錬磨の吉村さん、 コンピュータ将棋の弱点を知りぬいた作戦にまんまとやられてしまった。 苦しくなったところで86手目5五金と打ってくれたので多少紛れやすい形に。 TACOSも迷わず同飛車と切って勝負に行く。 もたれるような指し方で勝負形に持って行き、難しい寄せ合いへ。
116手目8九銀不成を同玉と取った手にはびびった。6七龍とされた時、相手玉に詰みがなければ負け。 飯田先生でさえもすぐには相手の詰みがわからず、単に自玉の必死が読めてないだけかもと 不安にかられつつもTACOSの読みでは一貫して相手の応手は4二飛だとなっている。 すると永世名人の指し手はTACOSの読みどおりの4二飛! 詰み筋はわからないもののどうやら読みは正しかったようで、ここで6七龍とこれないようでは こちらがだいぶ得をした。 あとで調べたところ6七龍なら馬を取らず3三銀と打って17手詰み! ひとめの3二とは同飛車で「ゼ」(絶対詰まない形)なので、 人間ならかなり強い人でも6七龍と指してしまうところかもしれない。 これで良くなったとは言ってもまだまだ難しい形。 TACOSが5七銀、5八金と自陣に金銀を投入して相手を急がせたところ永世名人は暴れ気味の指し手で いつの間にか楽勝の形に。 TACOSはこういう少しいい終盤で勝ち切るのがかなり上手になった。 最後は見事に21手詰みを瞬時に指し、待ちに待った決勝進出決定の瞬間が!! パン!(*^^)∠※!。・:*:・゜ \(^o^)/  メンバー全員と喜びの握手を交わし、しばらくは感動に浸っていた。 TACOS初参加から6年、一昨年のまさかの一次予選敗退の悔し涙からようやくここまでたどり着き、 ああ続けてやって来て良かったなあとしみじみと感じた心地よいひとときだった。
7勝1敗。




九回戦 KCC将棋
KCC将棋の皆さん
KCC将棋の皆さん

最後はお互い決勝進出を決めているKCC将棋と7勝1敗同士の対決。 明日は総当りのリーグ戦なのでこの試合自体は完全な消化試合。 私のお気楽な気分を反映したかのようにTACOSも気の抜けたような将棋になった。
TACOSの振り飛車穴熊でお互い手待ちの展開だが手待ちの仕方がひどすぎた。 実はこれが現在のTACOSの最大の問題のようで、決勝ではこの欠点がやたら出てしまった。 主に将棋倶楽部24での対戦で調整をしていたので、人間相手だとこういった手待ち合戦になりにくく 気づかなかったのかもしれない。 確かに探索で少し恣意的な方法をしている個所がありこの欠点に繋がっているのかも。 将棋は薄くしてしまった二、三筋を一方的に攻められる展開に。 途中悪いながらも敵の玉頭に殺到できそうな形になったが、 どうも読んでるうちに悪くなる順が見えてしまうのか読むほどに消極的な手を選ぶようになり、 最後は切らされて一方的に。しかし飛車逃げるなら最初から6一じゃなく7一だろうに。 確かに現状の評価関数と探索でそれをわからせるのは難しいかもしれないが、 このあたり何とか工夫しないと。とにかく反省材料の多い試合だった。
7勝2敗。